税法入門 (1)
[ ジャンル:法学 ]
2010年11月16日
○税法のふしぎ
「税法(tax law)」を大きなくくりで定義づけるとこのようになる。租税(tax)に関する法(law)の全体の総称。「税法」という名称の法律が存在するわけではないのである。個別の法律を列挙するとかなりの数にのぼる。所得税法、法人税法、消費税法、相続税法、印紙税法、酒税法、国税通則法、租税特別措置法、関税法、地方税法...etc。
私は税法を21歳の時に大学で学んだが、これほどの摩訶不思議はないと思ったものである。
今日は、シリーズで連載していく「税法入門」の初回。それにふさわしく、税法というものを根本的に見つめることから始めたい。
税法は租税に関する法であるから、先ずもって租税の意義というものを明らかにする必要がある。日本国憲法は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と第30条で規定し、また第84条において「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」とも規定している。が、そもそも「税」なり「租税」とは、いかなるものかという定義づけを一切してはいないのである。ということは、憲法制定時において既に、租税というものの概念が日本国民において一定かつ共通の認識であることが前提となっていたわけである。さらに、憲法のみならず、上に挙げた個々の税法律においても、租税に対する一般的な定義づけをした規定も存在しない。
このあたりが、私の言う摩訶不思議のゆえんの一つでもある。
租税とは何かについては、学説でさまざまな定義づけが試みられている。
一般的には、「国または地方公共団体が、収入を得ることを目的として、法令に基づき、一方向的義務として課す、無償の金銭的給付」とされている。
あくまで主体は国または地方公共団体であり、目的は収入を得ること。よって、収入を目的としない、つまり制裁的処置として課される罰金、科料、過料などは租税ではない。義務でなく、任意でなされる寄付金も租税には該当しない。また、無償の金銭的給付であるから、水道料金や市バスの料金などの使用料、住民票や戸籍謄本などを発行してもらうための手数料などは、行政事業や行政サービスへの対価たる性質を有するものであるから、これも租税とは区別されるのである。
なお、租税は古くは労役や米・布・炭・野菜・絹糸など物品の形態として存在したが、貨幣経済社会が確立された今日においては、金銭的な負担に限られている。とはいえ、金銭的価値を有する不動産や有価証券による租税の納付は認められている。ちなみに、これを「物納」という。
税という用語が付いていても、租税に該当しないものがある。延滞税、加算税、地方交付税などがそれである。
最後に、われわれは租税に関して、あまりに無知であり、従順でありすぎたのではないか。生まれ落ちたときから、租税というものが当たり前のようにつきまとい、何の不思議も感じず、言うなれば「空気」のような存在として認識しているかにも思える。
そもそも税など必要なのか。なまじ、税として受け取るから無駄遣いもし、垂れ流しもするのではないか。国や地方公共団体も、公平性を保ちながら独自の商法でもって収益を上げて、独自の行政サービスを行えば良いのではないか。人件費などの費用も応能でその収益から捻出することとすれば、もっと真剣に仕事に取り組める環境ができるのではないか。官による民業圧迫という側面もあるかもしれぬが、今でもそれが中途半端に存在する以上、いっそ競争原理を導入する方がよいのではないか。
こんな愚問な疑問が脳裏をかすめるのは、私だけであろうか...。
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