今日は、昨日の「税法入門(3)課税要件【その2】」からの続き。
○課税要件【その3】
⑤税率
課税標準に対する税額の割合のこと。言い換えると、税額を算出するために課税標準に対して適用される比率のこと。
課税標準が金額で示される所得税や法人税、相続税、贈与税、固定資産税などは、この税率が百分比(%)となる。が、課税標準が数量で示される印紙税や酒税などの場合は、一単位あたりの金額で示されることになる。一単位は、印紙税なら1通、酒税なら1キロリットルというように。
ちなみに、税率の定め方にはいろいろな考え方がある。大きく分けると、比例税率と差率税率であるが、後者の方はさらに細分化される。次に整理してみよう。
・比例税率→課税標準と税額との割合が常に一定の比率において定められる税率。例えば、固定資産税の場合は、課税標準の1.4/100で計算されるので、標準が高くなれば税額は上がり、低くなれば下がるのだが、その比率は常に一定である。
・差率税率→→→累進税率→→→単純累進税率と超過累進税率
→→→逆進税率
累進税率は、課税標準が高くなるに従って課税標準と税額との割合が高くなるように定められる税率。一方、逆進税率は反対に課税標準が高くなるに従ってその割合が低くなるように定められる税率。逆進税率を適用している税は、わが国にはなし。例えば、所得税について言うと、所得が高くなればなるほど税額が低くなるように設定するというのは市民感情にそぐわないし、不合理であるという考え方に立っているものと思われる。しかし、ある意味、頑張れば頑張るほど税金が安くなるという考え方も、これはこれで勤労奨励になるのかもしれないが。
累進税率には、単純累進税率と超過累進税率の2種類あり。
課税標準全体に対して各々の税率が適用されるのが単純累進税率で、課税標準が一定の割合を超える部分にだけ、順次高い税率が適用されるように定められたものが超過累進税率である。わが国の場合は、所得税、相続税など一般的にはこの超過累進税率の方を採用している。
ピンとこないかもしれないので、数字で説明しよう。話をわかりやすくするために実際の税率とは異なる数字を使う。
課税標準である所得が100万円、200万円、300万円の3人の人がいたとする。そして税率は100万円は10%、200万円は20%、300万円は30%だとする。
税金は100万円だから10万円、200万円だから40万円、300万円だから90万円というように、課税標準全体に対して各々の税率を当てはめようとするのが単純累進税率。一方、超過累進税率の考え方は、一定の割合を超える部分につき、順次高い税率を当てはめていくことになるので、次のようになる。
・100万円の人→10%だから10万円の税金。これは単純も超過も同じ。
・200万円の人→100万円分は10%で10万円。それを超えるもう100万円分は20%で20万円。よって、10万+20万で、30万円の税金。
・300万円の人→同じように、200万を超える100万円部分は30%で30万円。よって、10万+20万+30万で、60万円の税金。
と、こうなるが、単純累進税率を採用すると、税率が変わる前後の課税標準では、税額が非連続的に増大するという現象が起こるため、その不都合を回避するために超過累進税率を採用しているというのが立法趣旨である。
以上、3日間にわたって①納税義務者、②課税物件、③帰属、④課税標準、⑤税率の5つの課税要件について述べたが、おわかり頂けたであろうか。
最後にひと言だけ。個人は所得税を納め、法人は法人税を納める。では、なぜ所得税法の納税義務者に法人も列挙されているのか?
これは課税の便宜上、法人の一定の所得に対しても所得税法によって源泉徴収が行えるようにするため。預金利息を例に取ろう。金融機関は預金利息支払いの際には税金を計算して支払金額からその税金分を差し引いてその残額を預金者に利息として支払い、差し引いた分を国に納付するという源泉徴収を行う。
そこで、もし預金者が法人であれば源泉徴収できないことになると、源泉徴収義務者である金融機関は個人か、法人かをいちいち選別した上で徴収しなければならないという不便が生ずる。また、おカミとしても一律に税金を源泉徴収させる方が確実かつ簡便に税を徴収できるわけである。
よって、法人は法人税とは別に、所得税法上の源泉徴収制度の関係において所得税を納めることになり、納税義務者の一つに数えられているのである。
私、もう十数年も毎年、確定申告を手引きとにらめっこしながら行ってきたので、税のことは多少なりともなじみがある。だけど、確定申告をしたことがなく、税の勉強もしたことがない方にとっては、「???」の記事であったかもね。
私としては、内容のレベルを保ちながら、極力理解しやすいように記述したと自負してはいるのだが...。
2011年4月30日


