宝塚市不動産専門(新築一戸建て・新築分譲)「タカラコスモス」

部長のブログ

2011年4月の記事一覧

地面師 【パート23】

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  二一、いざ、広島!

 "あと、こんなことも考えなあかん場合があるから、よう頭に叩きこんどけや。"

 そう英二に言うと、池田は話を続けた。

 "例えばや、Aが相続登記した時の住所が、ここに出てくる横山区の漫画町やった場合や。この場合は、住民票、その除票、戸籍付票の請求を横山区役所でトライしてみる。ダメな場合は、Aの父親の登記上の住所である橋本区の住所で同じようにトライや。 

 それと、今回は橋本区特別町1丁目24番を本籍地とした戸籍付票が取れたわけやが、これは住居表示実施後の町名であり、番号であるわけや。これで取られへんときは、住居表示実施前はどんな町名で、どんな番号やったかを調べてから、たどっていくという手も残っとる。
 仮に、住居表示である「特別町1丁目24番8号」の住所が、住居表示実施前は「半端町35番地」やったとしよう。ここに、もともと本籍があって町名自体が後で変わったんなら、役所の方で本籍地の町名を勝手に変えよる。町名はいっしょで単に番号だけが変わったんならそのままやろな。注意せなあかんのは、「半端町35番地」の状態の時に転籍したんなら、そのままの記録が残るということや。それで除籍抄本を取るという手もあるんや。除籍謄抄本は、住民票の除票と違って50年くらいは遡って取れる。
 それで、現在の本籍地までたどり着ける。たどり着いたら、戸籍付票が取れる。付票が取れたら、現住所がわかるという寸法や。これも裁判目的で現住所をつきとめるための方策や言うて請求したら、役所の方も出しよるやろ。
 ええか、英二。大事なんは、請求するしかた、頼み方、頼まれた役所の人間の能力や意欲によって、取れるモンも取られへんときがあるいうこっちゃ。それに、わしらは表には出られへんから、他人にそういうことをしこまなあかんねやで。
 まあ、ちょっと難しいかもしれんけど、おまえなりにもう一回、よう考えてみいや。わからんことがあったら、また教えたるさかい。"

 そう池田に言われた英二は、わからんことだらけだと思いながら、"はい"とだけ言った。

 "さあ英二、現住所がわかったからには、次の作戦に移るでえ。ただ、その前にAの戸籍謄本を取っときたい。Aの家族構成を把握しとかなあかんからな。本籍地はわかってるんや。おまえでも簡単に取れる。歳もそんなに離れてないから怪しまれもせんやろ。前も言うた通り、申請書の筆跡は極端に変えとくんやで。"

 "アニキ、行くのが面倒で言うわけやないんでっけど、あの男に戸籍付票と戸籍謄本をいっしょに取らせへんかったんは、何ででっか?"
 英二の素朴な疑問に池田が答えた。
 "おまえ、なかなかエエとこ見てるやないか。それはやな、裁判目的で現住所が知りたい言うて付票を請求して出しよったんや。その他に戸籍謄本くれ言うのんは、おかしいやろが。"

 英二は翌日、橋本区役所に行き、戸籍謄本を持って帰ってきた。
 "アニキ、簡単に取れましたわ。Aのヤツ4人家族みたいでんな。"
 そう言って、英二は池田に戸籍謄本を手渡した。
 "よっしゃ英二、準備は整った。いざ、広島!や。こないだの男も必要や。向こうで落ち合えるように言うとってくれるか。"

 "へい、アニキ。"
 英二の声はかん高かった。まるで、今から遠足にでも出かける子どものように。


※ジャンル:不動産の「地面師」は、連載形式としています。通読されたい方は、ジャンル:不動産の過去の記事をお探し下さい。この続きは折を見て、断続的に掲載していくつもりですので、それまではしばしお待ちを...。

         【 不許無断複製 禁無断転載 】
 

2011年4月 2日

地面師 【パート22】

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  二十、おとぎ話のような池田の話

 英二に話して聞かせるおとぎ話のような池田の話は続いた。

 "なあ、英二。ある意味、Aの戸籍付票が取れたんは、かなりラッキーな点もあったんや。
 先ず、土地の謄本に載ってるように、Aの父親が取得した時の住所とAが相続登記した時の住所がおんなじ橋本区特別町1丁目24番8号やろ。だから、わしらにはこの住所の情報しかなかったわけや。住民票と除票を請求したが出えへんかった。次の手は、「1丁目24番」を本籍地とした戸籍付票の請求や。ラッキーにもこれで取れた。"

 そう言われても、今ひとつピンと来ていないような表情の英二であった。
 "すんません、アニキ。もうちょっと詳しく言うてもらえまへんやろか。"
 英二のリクエストに池田は応えた。

 "例えばAの父親の本籍地が神戸にあったとしよう。ということは、Aの父親が戸籍筆頭者で、その戸籍に嫁はんとAが入ってたわけや。嫁はんすなわちAの母親が先に亡くなって二人になった。この状態ではまだ父親が筆頭者や。次に父親が逝きよった。ということは、一人になったAが今度は筆頭者になりよる。それからAが結婚したら、そこにAの嫁はんが入り、生まれた子どもが入りよる。転籍せん限りは本籍地は神戸のままや。その場合には、わしらにはAの本籍地が神戸であることを調べる術(すべ)がないから、ジ・エンドや。ここまではわかるか、英二。"

 英二は黙って首を縦に振ると、池田はさらに続けた。

 "戸籍は、結婚すると新しいモンが編製されよる。まあ、ちょっと遡るでえ。Aの父親はAの母親と結婚した時に新しい戸籍が作られたはずや。「はず」と言うたんは、Aの場合はそうやなかったからや。珍しいケースやけどな。
 筆頭者は男でも女でもどちらでもなれるが、ふつうは旦那の方がなりよるやろ。Aの父親の父親、すなわちAのじいさんの戸籍からAの父親は抜けて、Aの母親もおんなじや。新婚さん二人だけの戸籍のできあがりや。ただ、そのときの本籍地をどこにするかは、婚姻届を出すモンの自由や。わしの勘では、新婚生活を始めたんが橋本区の特別町で、そこを本籍地として婚姻届を出したんやないかと思てる。そこで長いこと借家住まいやったわけや。家でも建てよか思て、堺の土地を買うたんやろ。でも、Aの母親が先に他界したわけやが、ちょっとの間、闘病生活もあったかもしれん。Aの父親としたら、親子三人水入らずのマイホームを建てようと思てたが、建てる意味のない状況になってしもたわけやな。
 まあ、この辺の推理が正しいと仮定してや。橋本区を本籍地にしたA親子の戸籍は、さっきも言うたようにや、Aの父親が筆頭者で、Aの母親とAが入っとったわけや。先に母親が逝ってx。次に父親がxや。自動的に一人になったAが筆頭者になって、本籍地はそのままや。
 Aが結婚しても、親元から抜け出して新戸籍が編製されることはないんや。この点もわしらにとってはラッキーやったかもしれんな。"

 食い入るように池田の話を聞いてはいたが、池田の洞察力にはもう自分には手も足も出ないと観念しながら、とりあえずおとぎ話が最後まで行くのを待つことに決めた英二であった。


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2011年4月 1日

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プロフィール
(株)タカラコスモス部長
古澤陽一
昭和41年11月、大阪市大正区で3姉弟の末っ子長男として生まれる。大阪市大正区の市立小・中学校を卒業。中学時代は『金八先生』が流行った校内暴力全盛時。
大阪府立大手前高校では、硬式野球部に所属。後、京都に憧れ、立命館大学法学部に学ぶ。ゼミでは、「クレジット・サラ金問題」を専攻。
卒業後、大阪市北区西天満の吉澤司法書士事務所に入所。3年間の勤務の後、株式会社タカラコスモスに入社、現在に至る。
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