税法入門(3)
[ ジャンル:法学 ]
2011年4月29日
今日は、昨日の「税法入門(2)課税要件【その1】」からの続き。
○課税要件 【その2】
少しだけ、固定資産税の帰属の問題について深掘りを。
固定資産税は固定資産の所有者に課すと、地方税法は規定している。よって、「所有する」ことによって帰属するのだが、その所有の判定は土地や建物の登記簿(登記記録)などによってなされる。ために、真実の所有者が所有者として登記されていないときは、所有者だと登記されている者がその固定資産を「所有する」とみなされるのである。
このように登記・登録上の名義によって形式的に帰属の関係を決定しようという考え方を「表見課税主義」という。本来ならば、真実の所有者に課税すべきところではあるが、役所の徴税便宜の観点から名義人への課税方法を採っているのだと思われる。
なお、どの時点の名義人を「所有する」者だとみなすか、という問題がある。その基準となる日のことを「賦課期日」というが、これは1月1日と規定している。よって、1月1日現在の登記等の名義人に対して納付請求書が送られることになる。
われわれのような不動産業者としては、この手の話は日常茶飯事である。
例えば、タカラコスモスが土地の売主で、Aさんが買主としよう。取引、つまり所有権移転登記と引渡し、代金決済を平成23年2月14日に行ったとする。平成22年度分(平成22年4月1日~23年3月31日)の固定資産税は税額が確定しているから、日割精算金として平成23年2月14日から同年3月31日までの分をタカラコスモスがAから取引時に頂戴する。また、平成23年度分の納付請求書が誰に送られてくるかと言うと、タカラコスモス。なぜなら、平成23年1月1日現在の登記名義人はタカラコスモスであったから。
しかるに、平成23年度分に当たる平成23年4月1日~24年3月31日の期間における所有者は買主であるAである(Aが他者に所有権移転しないことが前提)。真実の所有者たるAではなく、前所有者たるタカラコスモスに請求が来るのである。
もちろん、タカラコスモスは真実の所有者Aにそれを請求することになる。実務においては、前もって請求はタカラコスモスに来るからその際は払って下さいね、とAには説明しておき、念書のような形でAさんから一筆もらっておくのが通例。
なお、契約書においては、日割精算金算出のための起算日を4月1日としているのが一般的。これは、役所の会計年度が4月1日~翌年3月31日であり、これと一致させた方がわかりやすいことによる。
④課税標準
税率を適用して税額を算出するための基礎となる金額または数量のこと。
所得税のように所得を課税物件とする場合は、税率が直接適用される「課税される所得金額」などが課税標準となる。収入金額-必要経費=所得。サラリーマンなら、給与収入から給与所得控除を引いたものが給与所得。そこから、さらに各種の所得控除が差し引かれる。雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除等々。その結果、算出された金額が「課税される所得金額」なのである。このあたりのことは、私が過去に書いた記事「確定申告で...、ブログ。」ご参照。
不動産登記に際して必要な登録免許税の場合は、所有権移転登記については土地または建物の価額が課税標準となるのだが、実務においては固定資産評価額をもって不動産の価額としている。
なお、課税標準のうち、ある一定の期間内における課税物件(所得税なら所得)をとらえて課税標準とする場合がある。所得税や贈与税なら一暦年、法人税なら一事業年度というように。この期間のことを「課税期間」という。
ちなみに、このように一定期間を単位として区切って課税標準が算定される場合には、ある課税物件がどの課税期間に属するかがしばしば問題となるのだが、これを学術上は「課税物件の年度帰属の問題」という。
わかりやすく言うと、こういうこと。ある不動産業者の確定申告を例に取ろう。その会社、決算期は3月31日。ということは、一事業年度は4月1日~翌年3月31日。Aという不動産の売上げ計上を今期にするか、来期にするかによって今期黒字になるか、赤字になるかの瀬戸際。よって、何としても今期計上を果たしたい。基本的に不動産売上げの計上は不動産引渡時すなわち取引時を原則としているが、通達では売買契約時としても差し支えないとしている。まだもらっていない(残)代金を未収入金として計上することにより売上げ計上ができるのである。
あと、こういう問題も起こりうる。今年度と次年度とどちらに売上げ計上するかによって、税額に差が出る場合があるから、少ない税金で済む方に売上げ計上しようとする問題。上記の不動産業者を例にすると、売買契約が今期中で取引が来期になる不動産が3つあり、一つは今期に、残る2つは来期に計上するというようなやり方は、基準が不明瞭で自己都合だと言って税務署からは、利益操作として否認されかねない。
こういった問題は、次の⑤に述べる「超過累進税率」をわが国が採用していることにもよる。
長くなりそうだし、疲れてきたので今日のところはこれで止(よ)す。
続きは明日の「課税要件【その3】」でね...。
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