宝塚市不動産専門(新築一戸建て・新築分譲)「タカラコスモス」

部長のブログ

2011年9月の記事一覧

不動産の代襲相続と数次相続〈9〉

[ ジャンル: , ]

今日は、『不動産の代襲相続と数次相続〈8〉』からの続き。

 『不動産の代襲相続と数次相続〈1〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈2〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈3〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈4〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈5〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈6〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈7〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈8〉』

 やれやれ、やっと相続の基礎知識が終了した。よって、本題の「代襲相続」と「数次相続」に入っていける。
 「代襲相続」については、不動産業に従事する者、宅建試験の勉強をした者でも、正確に理解できている者は、案外と少ないのではないか。

 例を挙げよう。AB夫妻には、子CとDがいた。登記名義がAになっている不動産があり、Aは平成3年に既に亡くなっている。平成16年にCが亡くなり、CにはEという子がいる。Aの妻Bと子Dは存命。

 さて、このA名義の不動産の所有関係を平成23年時点において考えるに、B・D・Eが持ち主だと考える人が結構いるのではないか。この考え方、果たして正しいかというと、答えは正しいこともあれば、正しくないこともある、ということになる。また、ある人はこう考えるだろう。EはCを代襲して相続したのだ、と。
 こういう誤解は、不動産業界の中でもかなり蔓延していると、私は思う。実際、そういう考えをしている営業マンにお目にかかったことがある。大手不動産会社に勤務する人ではあったが・・・。

 さて、ちょっと解説を。
 Aを被相続人とする相続人は平成3年時点において、妻Bと、子のCとDであった。その後、Cが平成16年に亡くなったということは、Cの子EはAに対する相続人ではなく、Cを被相続人とした相続人であって、Cの配偶者(Eの母としよう)が存命であれば、Cとの関係においてその者も相続人になるのであり、必ずしもEだけが相続人になるとは限らない。こういう意味で、先ほど「正しいこともあれば、正しくないこともある」と言ったのである。ここにおいて、EはCの代襲相続人だという考え方は誤りなのである。

 ポイントとしては、こう。
 Aの子Cが、A死亡以前に死亡していれば、代襲相続。Aが死亡した後に、Cが死亡したのであれば、代襲相続ではない、ということ。この点は、相続関係を考えるにあたって、極めて重要なことなので、しっかり頭に入れておいて頂きたい。

 もう一度、先ほどの例で考えてみよう。
 
 ①のパターン
 もし、CがAより先に死亡していたのであれば、B・D・Eが相続人で、相続分は妻Bが1/2、DとEが1/4ずつとなる。EはCの代襲相続人で、その相続分はCが生きていれば得られたであろうものと同じである。

 ②のパターン
 ところが、先に挙げた例のように、Aが平成3年に死亡し、Cが平成16年に死亡したのであれば、そしてCの妻すなわちEの母が存命であれば、平成23年における不動産の持分はこのようになる。

○B:1/2【Aから相続した分】
○D:1/4【Aから相続した分】
○Cの妻(Eの母):1/8
  【CがAから相続した分が1/4、Cから相続した分としてその1/2】
○E:1/8【CがAから相続した分が1/4、Cから相続した分としてその1/2】

 ①の方が「代襲相続」ということであり、②が「数次相続」というものの考え方である。基礎知識の説明にかなりの労力を費やしたが、私がお話したかった核心部分である。
 この核心部分が理解できれば、「・・・」。私は、『不動産の代襲相続と数次相続〈1〉』の中で、こう書いた。

 「この二点が理解できさえすれば、相続というものの全体像が少しばかり垣間見えるだろう。また、ともすれば、これで正しい解釈をしているのだろうかという不安に陥りがちで、暗闇をさまよう者に一筋の光明を与えることとなるだろう。」と。

 では、「代襲相続」と「数次相続」について、もう少し深掘りしていくこととしよう。と思ったが、長くなりそうなので、今日のところはこれで止(よ)す。続きは、明日の『不動産の代襲相続と数次相続〈10〉』でね...。

2011年9月30日

不動産の代襲相続と数次相続〈8〉

[ ジャンル: , ]

 今日は、『不動産の代襲相続と数次相続〈7〉』からの続き。

 『不動産の代襲相続と数次相続〈1〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈2〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈3〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈4〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈5〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈6〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈7〉』

 (4)②の続き。

 第1順位、第2順位の者が不在であれば、最終順位として第3順位の者が相続人となる。これは、被相続人の兄弟姉妹である。異母、異父の兄弟姉妹を含む。が、相続分が異なることに注意が必要。
 被相続人と父母の両方を同じくする、すなわち全血の兄弟姉妹のみが数人いるとき、または父母の一方のみを同じくする、すなわち半血の兄弟姉妹のみが数人いるときは、その者たちの相続分は相等しい。けれども、全血の兄弟姉妹と半血の兄弟姉妹とが混ざって共同相続人となるときは、半血の方が全血の方の1/2の相続分になるのである。

 例えば、先妻の子としてAとBがいて、後妻の子としてCがいる場合に、Aの死亡によって開始した相続については、全血のBの相続分が2/3で、半血のCの相続分は1/3ということ。民法第900条4号但書に規定されているが、相続とは血の代償である、という考え方を偲ばせるものである。

 なお、同条但書は、このようにも定めている。第1順位の相続人につき、婚姻して生まれた子すなわち嫡出子と、婚姻外で生まれた子すなわち非嫡出子とが共同相続人になる場合、非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2になる、ということを。兄弟姉妹のときと同様、嫡出子のみ、または非嫡出子のみで共同相続する場合は均等だが、混ざり合うと1/2になる。

 例えば、Aには妻Bとの間に、子CとDがいて、認知した子Eがいたとする。Aの死亡によって開始した相続につき、配偶者Bが既に死亡していた場合、C・D・Eが相続人となるのだが、その相続分はC・Dが各々2/5、Eは1/5になる、ということ。
 私としては、兄弟姉妹相続における全血と半血の区別は血の濃さという、それなりの合理性を感じないでもないが、嫡出子と非嫡出子の相続分の違いは、婚内を善しとし、婚外を悪しとするかのようで、はなはだ理解に苦しむ。

 ところで、敢えて述べなかったが、配偶者以外の相続人つまり血族相続人は、血縁による身分関係ありというだけで、相続人たりうるわけであるから、性別、幼長、既婚・未婚、戸籍の異動、嫡出と非嫡出の別などは、相続人たる地位に影響を及ぼさない。実子と養子についても同様である。嫡出と非嫡出の子において、相続分が異なる場合があるだけである。

 では、法定相続分を再度、整理しよう。
 相続人が1人しかいなければ、その者が全てを相続することになる。これは、当然。次に共同相続の場合、配偶者が存命であれば、必ず相続人になる。そして、配偶者の相続分は、他の相続人が第何順位の相続人かによって異なる。第1順位の者との共同相続であれば、1/2が配偶者で、残る1/2を第1順位の者が分けることになる。第2順位の者との共同相続であれば、2/3が配偶者で、残る1/3を第2順位の相続人が分ける。第3順位の者との共同相続であれば、3/4が配偶者で、残る1/4を第3順位の相続人が分ける。
 但し、第1順位において、嫡出と非嫡出の子が相続人として混ざり合うときは、非嫡出子の方が半分となる。また、第3順位において、全血と半血の兄弟姉妹が相続人として混ざり合うときは、半血の方が半分となる。

 なお、相続開始の時期すなわち被相続人がいつ死亡したかによって、相続分が異なることには要注意。昭和56年1月1日以降の相続であれば、上記の通りであるが、昭和55年12月31日以前の相続であれば、配偶者の相続分は、順番に1/3・1/2・2/3となる。このときの民法改正によって、配偶者の相続分が引き上げられたのである。

 最後に、誰も相続人がいないとき、死亡した者の財産はどうなるか?この場合、その相続財産は国庫に帰属することとなる。
 

 今日のところはこれで終了。続きは、明日の『不動産の代襲相続と数次相続〈9〉』でね...。 

2011年9月29日

不動産の代襲相続と数次相続 〈7〉

[ ジャンル: , ]

 今日は、昨日の『不動産の代襲相続と数次相続〈6〉』からの続き。

 『不動産の代襲相続と数次相続〈1〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈2〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈3〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈4〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈5〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈6〉』

 (4)相続人は誰がなれるか?の①が終了したので、②へ。

②相続人の範囲・順位と相続分について

 これは、世間一般の人が相続とはこういうもんなんだろう、と漠然とイメージしている中心部分にあたるだろう。でも、正確に理解されているかというと、案外と疑問である。
 これまでにある程度述べてはきたが、ここでもう一度整理してみよう。

 死亡した者の財産上の権利義務を包括的に承継する者が相続人で、相続される死者を被相続人という。相続を被(こうむ)る人の意である。

 わが民法は、相続人としては法定相続人のみを認めており、被相続人は遺言によって相続人を指定することはできない。一定の範囲の者しか相続人になれない、ということ。遺言で指定することができるのは、相続分だけである。ここを勘違いしている人は、結構いるのではないか。だから、被相続人はかわいい愛人のために全財産を相続させようと、遺言を書いてもムダなのである。結婚するか、養子にしないと相続人にはなれない。

 とはいえ、遺贈や生前贈与によって愛人に財産を渡すことはできる。が、相続人の遺留分を害することはできない。結局のところ、相続人がいて、その相続人が遺留分減殺請求をする限りにおいては、全財産を愛人のものとすることはできないのである。どうしても愛人にだけ財産を渡したいなら、生前に贈与し、1年以上生き延びた上で、後に愛人が相続人の遺留分を害することを知らなかったと主張する手がないわけではないが・・・。

 法律上、画一的に定められた相続人すなわち法定相続人は、被相続人の配偶者であることによって相続人たる資格を持つ「配偶者相続人」と、被相続人と一定範囲の血族関係にあることによって相続権が与えられる「血族相続人」との二大系統に分かれる。

 相続人が一人なら、遺産全てを相続することになるが、複数人が相続する場合、これを「共同相続」というが、各相続人が相続財産全体に対して有する権利の割合が「相続分」である。先ほど述べたように、法定された相続分は、遺言によって変更することができる。但し、遺留分権利者の遺留分を害しない範囲に限られる。とはいえ、害するような遺言が無効となるのではなく、遺留分権利者による遺留分減殺請求が可能であるに過ぎない。遺留分について詳述すると、かなり脱線するので、ここでは控えよう。

 この遺言によって指定された相続分のことを「指定相続分」といい、遺言がなく、民法の規定によって定まる相続分を「法定相続分」という。

 配偶者は常に相続人となる。また、共同相続の場合でも、他の相続人の頭数によって相続分の影響を受けないのが配偶者相続人の特色と言える。共同相続人が第何順位の相続人かによって、配偶者の相続分は1/2、2/3、3/4と比率は変わるが、その頭数によって減らされることはなく、配偶者の相続分は固定されているという意味である。
 これは、配偶者の相続権には血族相続人のそれとはある種、異質なものがあることを思わせる。夫または妻の財産は、ふたりの協力によって形成されたものもあり、離婚における財産分与に似た考え方が根底にあるのだろう。

 血族相続人には3種類あり、順位がある。
 第1順位の相続人は子で、代襲されうる限り、いくらでも下に進む。代襲については後述する。だから、孫、曾孫等を含めた直系卑属だと考えればよい。 
 第1順位者不在のときに、第2順位の者が相続人となる。これは、親などの直系尊属。少し注意が必要。直系尊属であっても、親等の異なる者の間では、その近い者が優先する、ということに。難しい言い回しなので、例を挙げよう。

 被相続人Aには父Bがおり、母CはAより前に亡くなっていた。母Cにはその父母DとEがまだ健在。こういう場合、父Bのみが相続人で、DとEは相続人にはならない。代襲の話がまだなので、難しいかもしれないが、「逆の代襲」は起こらないのである。これは、DとEよりBの方がAに親等が近いから優先する、ということ。また、別の例を挙げよう。

 被相続人Aの父Bと母Cはともに他界していたが、父Bの父母、Aから見たら父方の祖父母DとEは存命、さらに母Cの父母、Aから見たら母方の祖父母FとGも、これまた存命。この場合は、D・E・F・Gが全員相続人となる。これは、D・E・F・GがAから見て同じ親等だからである。「下」すなわち直系卑属もずっと下に進むが、「上」すなわち直系尊属もずっと上に進んでいく。但し、「上」の場合は、途中に1人でもその進行を止める者がいれば、そこで止まるということ。抽象的な表現だが、理解すればわかりやすいと思う。


 長くなりそうなので、今日のところはこれで止(よ)す。続きは、9/29(木)の『不動産の代襲相続と数次相続〈8〉』でね...。 


2011年9月26日

不動産の代襲相続と数次相続 〈6〉

[ ジャンル: , ]

 今日は、昨日の『不動産の代襲相続と数次相続〈5〉』からの続き。

 『不動産の代襲相続と数次相続〈1〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈2〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈3〉』 『不動産の代襲相続と数次相続〈4〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈5〉』

(4)① イ)の続き。

 結論として、「亡田中正夫妻田中京子胎児」という名をもって、胎児は相続人として不動産登記ができる。誰が登記申請するかというと、もちろん母親のB。Bは胎児とともに法定相続分に従うなら、保存行為として単独で登記申請できる。もし、Bが自分の相続分を放棄して胎児にだけ相続させようと考えたなら、登記申請人は胎児となるが、この場合はBが胎児の法定代理人となって申請することになる。これは、未成年者の法定代理を胎児にも類推適用したものである。

 次に、胎児として登記したものの、もし死産の場合はどうなるか、また生きて生まれたときのその後の手続はどうするか、ということを考えてみよう。
 死産したときは、初めから相続人ではなかったことになるので、胎児の所有権抹消登記の申請をすることになる。
 生きて生まれたときは、戸籍謄本(抄本でも可と、私は考える)を添附して登記名義人の表示変更登記を申請することとなる。仮に、田中好夫という名前なら、「亡田中正夫妻田中京子胎児」→「田中好夫」に変更してもらうのである。別段、登記は胎児のまま残しておいても構わない。すぐに変更登記申請をする義務はないからである。けれど、不動産を売却したり、担保設定する際には、変更登記しなければできない、というだけである。

 また、もう少し深掘りすると、胎児の出生前には、相続関係が不安定な状態であるので、遺産分割協議はできない、というのが法務省の見解である。もちろん、出生後には遺産分割協議はできる。但し、赤ちゃんにその判断能力はないから、代理人を立てることになる。母Bも相続人の場合は、親権者として法定代理人になれるかと言うと、この場合は、代理人になれない。家庭裁判所に申し立てをして、「特別代理人」を選任してもらう必要がある。母と子は利害が対立する関係にあり、「利益相反行為」にあたるから。

 ところで、そもそもこのような登記申請において、胎児の存在を証明する書面を不動産登記法は要求していない。そんな規定がないからである。ということは、先に述べた例で、Aの母に相続権が発生することをBが嫌がり、胎児がいることを偽装して、Bと胎児でA所有の不動産を相続登記してしまう、ということはできないわけではない。しかしながら、そんなことをすれば、刑法第157条が規定する公正証書原本不実記載等の罪に該当してしまう。

刑法第157条
 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

 告発があって公訴になれば、5年以下の懲役または50万円以下の罰金である。執行猶予が付く可能性はあるにはあるが。
 刑法に触れることは横に置いても、Bはそんなことをする実益は少ない。なぜなら、胎児は出生してこそ、「亡田中正夫妻田中京子胎児」から「田中好夫」という名に変わって売買等の処分行為ができるから。とはいえ、Bが1/3にしろ、また裁判でひっくり返されるまでの一時的にせよ、Aの母親のモノにさえならなければそれでよいという考えなら、それはそれで実益を見いだせるのだが。

 というように書いては来たものの、私が思うに、以前のように登記官が出された書類だけを判断するという形式的審査権しか持たないわけではなく、実質的審査権を持つようになった今日においては、もし胎児の相続登記申請が出たなら、医師の証明書を要求するであろうことは、十分に考えられる。少なくとも、私が登記官ならそれを要求するだろう。

 ちなみに、私は不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を頻繁に目にする職業に、前職と現職で通算21年ほど従事しているが、胎児の記載など見たことは一度だってない。そんな記載を見たという話も聞いたことがない。先日、お付き合いのある司法書士に尋ねたら、「胎児の登記なんてできるの?」と言われたときは、さすがに「オイオイ」と思ったが・・・。

 実際のところ、胎児で登記される例は非常に少ないものと思われる。胎児の相続能力は認められているのだから、何もあわてて胎児のときに相続登記などせずに出生してからすればよいと考えられているのだろうか。とはいえ、嫁姑(よめしゅうとめ)のケンカは恐ろしいもの。こんなことだって、想定できるのである。

 Aの母は、わが子の財産が、嫁のBとその子だけに移ることに我慢ならない。孫はかわいく思うが、孫に渡る分は結局のところ、Bがどうにでもできる。あの嫁の自由にはさせない。だから、Aが死亡したこと及び妻Bがいることを証する戸籍謄本と、Aの母親であること及びAの父が死亡していることを証する戸籍謄本を揃えて、Bが2/3、自分が1/3の共同相続だとして、法定相続だから保存行為にあたり、単独で登記申請ができることになる。これをくつがえそうと思えば、妻のBは胎児が出産後に訴訟に持ち込んで、勝つしかないのである。まあ、裁判沙汰になったら100%勝てる勝負ではあるが。 

 以上、(4)相続人は誰がなれるか?①一般的な資格として何が必要か?の話はこれで終了。次は、②相続人の範囲等についてだが、今日のところはこれで止(よ)す。続きは、明日にね...。

2011年9月25日

不動産の代襲相続と数次相続 〈5〉

[ ジャンル: , ]

 今日は、昨日の『不動産の代襲相続と数次相続〈4〉』からの続き。

 『不動産の代襲相続と数次相続〈1〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈2〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈3〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈4〉』


(4)①

イ)胎児の取り扱いについて

 胎児は相続人になれるか?答えは、イエスである。相続人になれるなら、不動産登記上、相続人として名を連ねられるか?答えは、イエスである。が、これはかなり奥深い問題を内包している。
 例えば、夫Aが急死したとしよう。妻Bのお腹には赤ちゃんがいる。Aには母が存命で、BはAの母とは不仲である。AB間に子があれば、Aに対する相続人はBと子。相続分は1/2ずつである。子がなければ、BとAの母が相続人で、相続分は2/3と1/3。ここで、BとしてはAの母には相続人になってほしくない。自分とお腹の子だけで相続したい。そう考えても無理はないが、果たして胎児が相続人となれるのか?こういう点が、この問題の原点ではあるが、これは単にそういった問題に止まらないというのが、私の考えである。では、順を追って説明して行こう。

 先ずもって、民法は第3条1号(改正前は、第1条の3)で、こう定めている。「私権の享有は、出生に始まる。」と。これは、自然人の権利能力は、出生して初めて発生する、ということを言っている。但し、民法はさらにその例外規定も置いた。第721条、第886条、第965条が、そうである。すなわち、不法行為に基づく損害賠償請求権と相続、遺贈に関しては、「胎児は、既に生まれたものとみなす。」と規定したのである。
 
 民法第886条はこうである。
 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは適用しない。

 2号の規定から先に。流産したり、死体となって生まれ出たときは、実際に相続することはないが、たとえわずかな時間でも、この世に生命をもって現れ出たのであれば、すぐに死亡したとしても、一旦は相続人となり、さらにその赤ん坊を被相続人とした新たなる相続が開始することになる。

 1号の「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」という規定は胎児に「相続能力」を認めたものであるのだが、その解釈において学説は大きく二派に分かれる。「解除条件説」と「停止条件説」。

○解除条件説
 被相続人の死亡から胎児の出生までの間を、一応相続人として扱い、死産のときにはさかのぼって、初めから相続人ではなかったことにする。言い換えると、胎児は胎児である時に相続能力(権利能力)があり、死産だったときに限り、相続開始時にさかのぼってその権利を消滅させる、という考え方。

○停止条件説
 胎児が生まれたときに、被相続人死亡時すなわち相続開始時にさかのぼって相続人となる。生きて生まれることを停止条件、生きて生まれるまでは条件未成就だから相続能力は認められず、生きて生まれたときに、相続開始時にさかのぼって相続能力を取得する、という考え方。

 判例は、停止条件説を採用しているかにも思える。しかし、数が少なく、個々の事案によっては反対説を唱えることもあるだろう。昭和7年の「阪神電鉄事件」が停止条件説を採ったものとして有名ではあるが、ここでは割愛することにする。

 さて、不動産登記実務ではどうか?法務省は、解除条件説に立っているようだ。
 実際にはどういう流れになるかというと、こうなる。その前に、根本的に出生していないわけだから、胎児には氏名がない。なのに、登記できるのか、という問題が先に立つ。名義人として権利の主体性が認められることを、「登記能力がある」と表現するが、登記の実務は「亡何某妻何某胎児」という名義人を認めている。わかりにくいので、先ほどの例で、Aの氏名を田中正夫、妻Bを田中京子だとすると、「亡田中正夫妻田中京子胎児」という名前で登記することになる。ちなみに、「夫田中正夫亡田中京子胎児」となる可能性について言うと、これはないに等しい。妊婦だけ死亡して、胎児だけ生き続けるということはないだろうし、出産直前に妊婦が死亡し、胎児だけ生きて生まれた場合は、何も胎児であわてて登記しなくても、出生した赤ん坊の名で登記すればよいからである。


 長くなりそうなので、今日のところはこれで止(よ)す。続きは、明日の『不動産の代襲相続と数次相続〈6〉』でね...。 

2011年9月24日

不動産の代襲相続と数次相続 〈4〉

[ ジャンル: , ]

 今日は、昨日の『不動産の代襲相続と数次相続〈3〉』からの続き。

 『不動産の代襲相続と数次相続〈1〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈2〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈3〉』


(4)相続人は誰がなれるか?

 この問題は、少し細分化してお話したい。一般的な資格、範囲、順位という観点から眺める必要があるから。

①一般的な資格として何が必要か?

 ふつう、これは「相続能力」の問題として語られる。相続人となることができる一般的資格が「相続能力」である。別段難しくはない。人間であればよい。だから、動物はダメ。未成年者や心神喪失者のような「行為能力」を認められない人であってもよい。法人は「ヒト」とみなされるが、相続能力は認められない。「自然人」のみ。

 この観点からは次の問題が浮上する。被相続人と推定相続人が同時に死亡した場合と、胎児の取り扱いの二点である。

ア)同時存在の原則について

 被相続人が死亡した瞬間、すなわち相続開始時において相続人が生存していなければならないという原則のことを「同時存在の原則」とよんでいる。根本的に、タッチの差にしろ、被相続人より推定相続人の方が先に死亡したことが確実視できれば問題は起きない。先に死亡したわけだから、相続人になり得ないという結論になる。けれども、全く同時に死亡した場合はどうかという問題が出る。これは、相続開始と同時に推定相続人も死亡したわけだから、相続人とならない。原則通りである。とはいえ、老衰や病気で、同一年月日、同時同分同秒で死亡することなど、非現実的で空論にすぎない。ただし、同一の危難に遭遇して、例えば夫婦や親子が同じ飛行機に乗り、墜落して死亡したような場合や同乗していた車で交通事故に遭い死亡した場合など、死亡の前後が判然としないことが多いため問題となる。

 このような問題を解決すべく、昭和37年の民法改正によって、第32条ノ2が新設され、「同時死亡の推定」の規定がおかれた。

民法第32条ノ2
 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

 この規定は二点ほど興味深い。

 先ず一点。何も同一の危難に遭遇して死亡ということだけを想定していないこと。別個の危難であっても構わないのである。だから、被相続人は飛行機事故に、推定相続人の方は自動車事故に遭って、どちらが先に死亡したかが明らかでない場合も、同時に死亡したと推定するのである。法律用語としての「推定」は要注意。反証を挙げれば覆(くつがえ)す余地がある、ということ。つまり、同時でなかったという確かな証拠が出れば、ひっくり返せるが、その立証は事実上、困難を極めるだろう。だから、同時に死亡したと推定されたままであれば、両者間で相続は開始しないという結果になる。

 もう一点。この第32条ノ2の規定が設けられる前はどうだったか、ということ。結論から言おう。これは遺産を早く取得した者が俄然、有利であった。動産なら、占有。不動産なら、登記。例えば、次のような違いが出る。

 A:夫、B:妻、C:夫婦の子、D:Aの父親としよう。AとCが同乗していた車が交通事故に遭い、ふたりとも死亡した場合を想定しよう。

○第32条ノ2の規定が設けられてから
 反証ない限り、被相続人Aの相続人は、妻のBと父親のD。(被相続人Cの相続人は、Bのみ。)

○第32条ノ2の規定が設けられる前
 仮に、妻のBが遺産を素早く取得(占有、登記)してしまうと、断然Bが有利で、Dが不利となる。なぜなら、DはCがAより先に死亡したこと、またはAとCが同時に死亡したことを立証しなければ相続人として遺産を分けてもらえないからである。上記のように、このような立証は困難、いや不可能に近いかもしれない。裁判上、挙証責任を負う者、すなわち自分は相続人になるから遺産をよこせと願い出る者に、過度の負担を強いる結果となっていたのである。


 長くなりそうなので、今日のところはこれで止(よ)す。続きは、明日の『不動産の代襲相続と数次相続〈5〉』でね...。 

2011年9月23日

不動産の代襲相続と数次相続 〈3〉

[ ジャンル: , ]

 今日は、一昨日の『不動産の代襲相続と数次相続〈2〉』からの続き。

 『不動産の代襲相続と数次相続〈1〉』

 『不動産の代襲相続と数次相続〈2〉』


(2)相続はどこで開始するのか?

 民法第883条は、「相続は被相続人の住所地において開始する」と規定している。この問題は、一見大した問題ではなさそうに考えられがちであるが、相続が訴訟沙汰になった場合にクローズアップされる。とはいえ、民事訴訟法上に詳細規定があるから、基本的にはこの規定が適用される余地はないのだが、結論的には同じになるので、簡単に例を挙げよう。

 例えば、相続人Aが死亡し、相続人B・C間で相続問題に争いが生じた。Aの住所は北海道で、BはAと同居していたので同じ住所。Cは沖縄に住んでいる。
 BがCに訴えを提起する場合、基本的には相手方Cの住所地である沖縄の裁判所にする必要があるが、Bは相続開始場所である北海道の裁判所にも提訴ができる、ということ。もちろん沖縄の裁判所に提訴することは妨げない。
 逆に、CがBに提訴する場合は、Bの住所地は北海道で、相続の開始場所も北海道だから、北海道の裁判所にしかできない、ということ。
 訴訟における裁判所管轄の問題は、当事者の距離が遠くなればなるほど重要となる。北海道と沖縄くらい離れると、その移動のための時間と費用がバカにならないからである。


(3)被相続人がいつの時代に死亡したかということが問題になるか?

 これは大問題である。案外、ふつうは意識されないことであるが。
 相続は、相続開始時の法律を適用するから、わが国における相続に関する法律(「相続法」と総称することにする)の沿革を理解しておかなければ、正しい判断を見誤る。

 相続法は、大きく分けて3つのプロセスをたどった。旧民法(明治31年の法律9号)、応急措置法(正式名称は、「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」、昭和22年の法律74号)、そして現行民法(昭和22年の法律222号)である。また、昭和55年に現行民法は相続分に関して大きな改正がなされたことも見逃せない。

 つまり、被相続人がいつ死亡したかによって、適用される法律が異なり、相続人や相続分に違いが出るのである。厳密に言うと正確ではないが、整理すると次のようになる。

①明治31年7月16日~昭和22年5月2日→旧民法を適用

②昭和22年5月3日~同年12月31日→応急措置法を適用

③昭和23年1月1日~昭和55年12月31日→改正前の現行民法を適用

④昭和56年1月1日~現在に至る→改正後の現行民法を適用 

 それぞれを適用したら、どうなるかまで詳述しだしたら、重たくなるので割愛する。③と④だけを少し。昭和55年の民法改正(昭和56年1月1日施行)で、配偶者の相続分が引き上げられたことくらいを理解していればよいと思う。


 長くなりそうなので、今日のところはこれで止(よ)す。続きは、明日の『不動産の代襲相続と数次相続〈4〉』でね...。

2011年9月22日

タグクラウド
プロフィール
(株)タカラコスモス部長
古澤陽一
昭和41年11月、大阪市大正区で3姉弟の末っ子長男として生まれる。大阪市大正区の市立小・中学校を卒業。中学時代は『金八先生』が流行った校内暴力全盛時。
大阪府立大手前高校では、硬式野球部に所属。後、京都に憧れ、立命館大学法学部に学ぶ。ゼミでは、「クレジット・サラ金問題」を専攻。
卒業後、大阪市北区西天満の吉澤司法書士事務所に入所。3年間の勤務の後、株式会社タカラコスモスに入社、現在に至る。
ジャンル
  • RSSリーダーのご利用で、このブログの更新情報をいち早く入手できます。
  • RSSを登録する