兵法 『孫子』 【パート7】
2012年2月10日
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前回の【パート6】までで「始計篇」が終了したので、次は「作戦篇」に移る。
孫子曰く、凡そ用兵の法は、馳車千駟(ちしゃせんし)、革車千乗(かくしゃせんじょう)、帯甲十万(たいこうじゅうまん)、千里にして糧を饋(おく)るときは、則ち内外の費、賓客の用、膠漆(こうしつ)の材、車甲の奉、日に千金を費やして、然る後十万の師挙がる。
その戦いを用(おこ)なうや、久しければ則ち兵を鈍らせ、鋭を挫(くじ)く。城を攻むれば、則ち力屈(つ)き、久しく師を暴(さら)さば、則ち國用足らず。
夫(そ)れ兵を鈍らせ、鋭を挫き、力屈くし、貨を殫(つ)くさば、則ち諸侯、其の弊に乗じて起こる。智者ありと雖(いえど)も、其の後を善くすること能(あた)わず。
故に兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久なるを睹(み)ざるなり。夫れ兵久しくして国の利する者は未だこれ有らざるなり。故に尽(ことごと)く用兵の害を知らざれば、則ち尽く用兵の利を知ること能わざるなり。
要約すると、こう。
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戦争には一日千金という莫大な費用がかかる。だから、たとえ勝っても長期戦によって国力を消耗してしまうと、国家の滅亡を招きかねないので、できるだけ短期戦で終えることを心掛けるべきである。
次に、前半のわかりにくい部分を上から順に注釈しよう。
○帯甲十万・・・武具を身につけた兵士十万。「甲」はかぶと、「帯」はおびるの意。
○千里にして糧を饋る・・・食糧、物資の遠距離輸送をさす。
○賓客の用・・・外交、接待の費用。
○膠漆の材・・・膠(にかわ)や漆(うるし)など、武具の材料のこと。
○車甲の奉・・・戦車や甲冑(かっちゅう)を戦場に供給すること。
○十万の師挙がる・・・莫大な戦費をかけて初めて兵十万の軍隊が動かせるということ。
以下は、逐語訳してみよう。
長期戦になると軍は疲弊し、鋭気をくじかせることになる。城攻めをすると、戦力が尽きて、長い間軍隊を露営させることになり、国の財政が窮乏してしまう。
そもそも、軍が疲弊し、鋭気がそがれ、力がなくなった上で、国政が破綻したような状態に陥ってしまったら、(他国の)諸侯たちがその隙を狙って攻め込んでくることもある。
そうなれば、たとえ味方に知恵者がいても、これはもう防ぎきれるものではなく、善後策が立てられない。
よって、戦争は拙速ということはあっても、巧久ということはない。戦争が長引いて国益となることなど全くないのだ。
だから、戦争における損害を十分に理解した者でなければ、戦争における利益も十分に理解することなどできないのである。
なるほど、戦争のみならず、企業戦略や投資においても当てはまる見解だ。
戦争はできるだけ避けるべきだが、戦争やむなしとなった場合でも、短期戦で終わらせ、泥沼化を回避すべきだ、ということ。
日本の戦史を考えるに、日露戦争における当時の指導者たちと太平洋戦争における指導者たちとでは、戦争の収束のうまさに格段の違いがあったことは、よく知られているところである。
また、アメリカが対ベトナムやイラク戦でどれほど国力を消耗したかも想像に難くない。
最後に、「拙速」と「巧久」について。これ、反対語。一般的には「巧久」より「巧遅」を使うことが多い。
拙(つたない)い、つまり出来はよくないが、速い。巧(たく)み、つまり出来はよいが、長いまたは遅い。これ、どちらが勝るかはケース・バイ・ケース。
少なくとも戦争については拙速を旨(むね)とすべしは、なるほど賛同できる意見である。
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