兵法 『孫子』 【パート8】
2012年9月 7日
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今日は、「作戦篇」の続きを。
善く兵を用うる者は、役は再び籍せず、糧は三たびは載せず。用を国に取り、糧を敵に因る。故に軍食足るべきなり。国の師に貧するは、輸(おく)ればなり。輸れば、則ち百姓(ひゃくせい)貧し。近師なるときは貴売す。貴売すれば、則ち百姓は財竭(つ)く。財竭くれば、則ち以て丘役に急なり。力は屈し、財竭き、中原の内、家に虚し。百姓の費、十にその七を去る。公家の費、破車罷馬、甲冑弓矢、戟楯矛櫓、丘牛大車、十にその六を去る。
故に智将は務めて敵に食む。敵の一鍾を食むは、吾が二十鍾に当たり、禾干一石は吾が二十石に当たる。
これを逐語訳すると、こうなる。
戦上手な者は、国民の兵役は二度と繰り返し徴発せず、食糧は三度と自国から運ばない。軍需品は国内で調達するが、食糧は敵地に求める。よって、兵糧は十分だ。国家が軍隊のために貧しくなるのは、遠征した場合に遠くまで補給物資を輸送するからであり、遠くにいる遠征軍に物資を輸送すれば、国民は生活物資が欠乏して貧しくなる。国の近くに軍隊が出動すれば、近辺の農家・商人たちは、物資の不足を理由に物価を高騰させる。物の値段が上がれば、国民の蓄えは枯渇してしまう。そうなれば、軍役にも支障をきたすことになるだろう。かくして、前線での戦力は衰え、国家の財政が破綻すると、国内の家々では生活が困窮する。 国民の生活費は平時の七割までが軍事費に消えてしまうことになる。また、国家財政は戦車の破損や軍馬・車両の損失、武器や装備の損耗などによって、平時の六割がた削減されてしまうのだ。
だからこそ智将は、できるだけ適地で食糧を調達することに努める。輸送コストを考えると、敵地で食糧一鍾を食らうのは、自国から輸送する二十鍾に相当し、敵地で調達した飼料一石は、同じく二十石に相当するのだ。
この件(くだり)は、戦略の本質をズバリ言い当てていると、私は思う。戦上手な智将は、次のような戦い方をすると言っている。
①徴兵は一回限り。計算した兵の数で勝利を収め、兵の補給をしないということ。
②食糧輸送は二回限りで、三回とはしない。これは、先ず出陣の際には食糧を持って出る。そして、次は凱旋の時。初めと終わりは自国から食糧を運搬するが、途中ではしないということ。戦争中は、敵地で調達する。
③戦争はできるだけ敵地に打って出るべし。自国ですれば、農地は荒らされ、自国民を巻き込んでしまう。また、自国に近い場所ですると、戦時の物不足につけ込んで、農商民たちが物価を騰貴させる恐れがあるから。
戦争やむなしといえども、国も民も窮乏させる戦費をいかに削減させるか。これが勝利するための大きなカギとなる。だが、腹が減っては戦ができぬ。これは人馬ともに言えることだ。孫子は、食糧や飼料については、現地調達がコスト削減につながると説いている。
なお、ここにいう現地調達は、現地民からの略奪を意味するのではなく、相当なる対価での買い上げだと、私は考えたい。
ところで、太平洋戦争において日本が敗戦した原因に、国力の計算不足のほかに、各地での略奪行為が挙げられるのかもしれない...。
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