ルールブックの盲点の1点 【その2】
2013年12月 2日
今日は、昨日の「ルールブックの盲点の1点 【その1】」からの続き。
延長戦10回表、一死満塁、明訓のバッターは微笑三太郎。白新の不知火にとって、こういう得体の知れぬ、ラッキー・ボーイのような5番は嫌な相手であった。全力投球で挑もうとした不知火は、野手に指示を出した。内野には5m、外野には15m前進しろ、と。自分が渾身を込めて投げた球は、バントはできても外野に運ばれることはないという自信があったからだ。
セット・ポジションから不知火が左足を上げた。と同時に三塁ランナーの岩鬼がスタート。おっと、1球めからスクイズのサインだ。岩鬼のダッシュは、たとえ微笑が空振りしたとしてもホーム・スチールで1点をもぎ取ってやるというほどの勢いだ。
右足から左足に全体重が載り、右腕を折りたたみながら右ヒジをバッターに向かってつきだしていく投球は、実に美しいフォームだ。放たれたストレートは、ど真ん中へと向かう。微笑はスクイズのサインによりバントを試みるも、ホップするような剛速球に押され、小フライを上げてしまう。
これを落とせば、1点が入ってしまう。だから、不知火はファーストにはベースに戻るよう指示しながら、俺が取ると言って頭から突っ込んだ。バントの場合、たとえフライが上がっても、審判はインフィールド・フライを宣告しない。ノーバウンドでキャッチすることによって、その場でバッターはアウトとなる。不知火の執念のダイビング・キャッチは、見事ファイン・プレーとなった。バッターの微笑はアウト。これで、2アウトが成立した。
次に不知火が取った行動は、1塁への送球であった。1塁ランナーの山田が、1塁ベースから飛び出していたのを刺すためだ。フライやライナーのような飛球が捕球された場合、ランナーは帰塁しなければならないのだ。これを「リタッチの義務」というが、ランナーがリタッチする前に、ボールをその塁に投げてベース・タッチすれば、ランナーが刺されたことになり、アウトとなる。ランナーの体にボールまたはボールの入ったグラブをタッチしてもよいし、ボールを持った状態でベース・タッチしても構わない。ふつうは、このタッチを足でする。
不知火が投げた球は、1塁ベースを踏むファーストにより捕球された。山田のリタッチよりも早くにだ。よって、ランナーの山田はアウトを宣告された。スリー・アウト・チェンジで、白新ナインはベンチへと向かう。一死満塁のピンチを脱した白新ベンチは意気揚々、10回裏でのサヨナラ気分に満ちていた。
大チャンスを逸し、意気消沈する明訓ベンチに山田が声を張り上げて帰還した。
「よ~し、1点取ったぞ~!」
「暑さで頭いかれたんとちゃうか!」
岩鬼は山田を罵り、みんなも不審がるが、ひとり殿馬はすばやく合点する。
「スコア・ボード見るずらあ。」
そこには、たしかに1点が刻まれていたのだ。それを見て、愕然とする不知火が叫んだ。
「バカな、どうして1点が入るんだ!ダブル・プレーでチェンジじゃないか!」
長くなりそうなので、今日のところはこれで終了。続きは、明日のことに...。
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