イソップ物語 【パート5】
[ ジャンル:文学 ]
2014年3月 7日
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今回は趣向を変えて、文語で綴られた『伊曾保物語』から。
ある犬、肉(ししむら)をくはへて川を渡る。まん中のほどにて、その影、水に映りて、大きに見えければ、「わがくはふるところの肉より大きなる」と心得て、これを捨ててかれを取らんとす。かかるゆゑに、 二つながらこれを失ふ。そのごとく、重欲心の輩(ともがら)は、他の財をうらやみ、ことにふれて、貪(むさぼ)るほどに、たちまち天罰をかうむる。わが持つところの財をも失ふことありけり。
これ、『肉をくわえた犬』というお話。次に『古澤版イソップ物語-肉をくわえた犬-』を記してみよう。
肉をくわえた犬が川を渡ろうとしています。橋の真ん中ほどで川をのぞき込んだ犬はビックリ。なんと肉をくわえた犬がいるではありませんか。しかも、自分の肉よりも大きなのを。
〈よし、あいつの肉も奪ってやろう。〉
犬はうらやましいほどに大きな肉をくわえた犬をにらみつけながら、ウウーッとうなり声をあげました。相手の犬も負けじとこちらをにらみ返してきます。
〈チクショー、生意気なやつめ!〉
犬はワンと大きく吠えました。すると、肉は川に落ちてしまいました。
〈し、し、しまった。〉
後悔先に立たず。もはや、相手の肉を奪ってやろうという気にもなりません。だって、相手の口にはもはや肉はないのですから・・・。
さて、ここでお考え頂きたい。『伊曾保物語』の犬と『古澤版イソップ物語』の犬とでは、どちらが強欲かを。これは簡単。もちろん、私の描いた犬のほうだ。
『伊曾保物語』では、犬は相手のほうが大きいから、それに目がくらみ、自分のを捨てて相手のを奪おうとしている。一方、『古澤版』では、両方をわが物にしようという魂胆だ。前者が「隣の花は赤い」なら、後者は「二兎を追う者は一兎をも得ず」や「虻蜂取らず」といったところか。
まあ、いずれにせよ、犬は2つ損したと考えている。肉は1つしかないのにだ。そこが、このお話のミソなのである。
「重欲心の輩」は、とかくそのように考えてしまうものなのかもね。私も含めて...。
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